肝がん

肝がんとは

肝がんには、肝臓から出現した「原発性肝がん」と、他臓器で発生したがんが肝臓に転移した「転移性肝がん(続発性肝がん)」があります。原発性肝がんはさらに「肝細胞がん」と「肝内胆管がん」に分けられます。原発性肝がんのうち、およそ90%が肝細胞がんであり、残りのほとんどを肝内胆管がんが占めています。このため一般的に肝がんというと原発性肝がんの肝細胞がんを指します。ここでは原発性肝がんについて説明していきます。

原発性肝がん

原発性肝がんは他臓器のがんと異なり慢性肝疾患からの進展が多く、肝硬変に至った場合、慢性肝炎よりも発がんするリスクが高くなります。特にB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)感染者での発がんが多く、B型肝炎ウイルスに感染している場合、ウイルスそのものが発がんの原因になりうるとも考えられています。さらに、肝がんはいったん根治できたとしても、年間20%が再発するとされています。

一般的に肝がんは、長期にわたり肝臓が炎症することで肝細胞が破壊と再生を繰り返し、この繰り返しが原因で発がんするといわれています。そのため、肝炎や肝硬変などの早期発見や治療、進行の抑制を行うことが大切です。

原因

以前は、原発性肝がんの原因の多くがB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染によるものでしたが、著効率の高いC型肝炎ウイルス治療薬(DAA)が登場してからは減少傾向にあります。その代わりにアルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、糖尿病、高血圧などの生活習慣病を背景とした肝細胞がんが増加しています。

症状

がんの直径が小型の場合には特に症状もなく、画像診断で見つかることがほとんどですが、がんが大きくなるにつれて肝硬変などにみられる黄疸や腹水の増加などが現れることもあります。また、肝臓自体は痛みを感じることがない臓器ですが、小型であっても肝臓の外へ突き出すように大きくなった場合、腹腔内で破裂し出血を起こすことで、腹部の激痛や血圧低下などから生命の危機に陥ることもあります。さらに腫瘍が大きくなり肝臓の被膜が伸ばされると、腹部の張りや内臓に痛みを感じることがあります。

治療法

状況により治療法は異なりますが、代表的な治療法は以下のとおりです。

●外科療法:肝切除

がんを含む肝臓の一部を切除する手術です。

●穿刺局所療法:ラジオ波焼灼療法(RFA)

がんに電極を差し込み、ラジオ波電流を流して高熱を発生させることで局所的にがんを焼灼する手術です。

●肝動脈化学塞栓療法(TACE)

抗がん剤を肝臓の血管に直接流し込み、がんに栄養を運んでいる血管を塞いで兵糧攻めにする治療法です。

●全身化学療法:抗がん剤・分子標的治療薬

抗がん剤や分子標的治療薬を用いてがん細胞の分裂を押さえ、がん細胞を破壊する治療法です。

上記以外にも、肝移植などの治療法があります。肝がん治療後も定期的に画像検査(造影CT/MRI)およびフィブロスキャン検査や腫瘍マーカーの測定を行い、早期に肝がんの再発を発見し治療することが大切です。

肝がん治療アルゴリズム(日本肝臓学会 肝癌診療ガイドライン2017年版)とは、肝がんの病態に応じた治療方針の選択基準を示したものです。これはあくまでも大きな目安であり、肝がんの治療法は患者さまの条件ごとに総合的に判断し選択されます。以下の図は、担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

肝がん治療アルゴリズム