MASLD/MASH

MASLD
(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:マッスルド/マッスルディー)とは、脂肪肝に加え、肥満、耐糖能異常、高血圧、高中性脂肪血症、低HDL血症のいずれかを併発している疾患を指します。MASLDは、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の肝臓における表現型として発症し、お酒をあまり飲まない人でもアルコール関連肝疾患の人のように肝疾患が進行します。

MASLDは以前、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルド/ナッフルディー)と呼ばれていました。しかし、欧米ではNAFLDの「A」を指す「Alcoholic」は「飲んだくれ」、「F」を指す「Fatty」は「太っちょ」のような意味合いも持つため、社会的な偏見(スティグマ)を生む名称を変えるべく、欧米の関連学会より2023年6月に新たな名称が提唱されました。日本の消化器病学会と肝臓学会でも同年9月に名称変更への賛同声明がなされ、現在このような名称となりました。

なお、これまでのNAFLDは、アルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝(除外基準)であり、組み入れ基準を採用するMASLDとその分類方法が少し異なります。一方で、MASLDとNAFLDの一致率については、本邦の報告で96~99%の方が一致するとされています。2012年当時のNAFLDに関する大規模疫学調査によると日本人のNAFLD有病率は29.7%と報告されており、この疾患は肥満やメタボリックシンドローム患者の増加に伴い、年々患者数が急増しています。

MASH
(代謝機能障害関連脂肪肝炎)

MASLDには、肝細胞が壊されて機能しなくなり、脂肪肝から炎症や線維化を伴い肝硬変や肝がんなどに進行するリスクのある代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:マッシュ)があります。元々は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)と呼ばれていましたが、MASLDと同様に「スティグマ」を取り除くために名称が変更されました。

肝臓の病気と言えばお酒の飲み過ぎやウイルス性に感染することによる肝炎を思い浮かべる人が多く「脂肪肝くらいなら大丈夫」だと考える人が多いかもしれませんが、実際はMASLD患者のうち20~30%が上記のようなMASHであると推定されています。近年の研究ではMASHへ病態が進行することよりも、肝臓の線維化がどの程度進んでいるかの方が重要だとも言われており、いずれにしても早期に検査を受け肝臓の状態を確認することが大切です。

治療

治療に関しては生活習慣病との関連が強く、基本的には食事や運動によるライフスタイルの改善などが早期治療の基本となります。脂肪肝と診断された方はきちんと医療機関で診断を受け、病気が進行する前に生活習慣を改善することが大切です。

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