メタボから肝がんに進行!?最近「メタボ肝がん」が増えています
第1回では、最近増えてきているあまりお酒を飲まない、あるいは痩せているのに脂肪肝という「非アルコール性脂肪肝」について紹介しました。2回目の今回は、脂肪肝から肝硬変や肝がんに進行する「メタボ肝がん」についてご紹介していきます。
メタボ肝がんとは?
第一回のコラムで非アルコール性脂肪肝を放置していると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあるというお話をしました。これまで肝がんの発生は肝炎ウィルス感染者や飲酒量が多い人がかかる病気だと思われてきましたが、近年の肥満(メタボ)人口の増加に伴い「メタボ肝がん」の増加が社会問題になっています。
メタボ肝がんとは、肝炎ウィルスの感染がなく、肥満や糖尿病などのメタボ疾患に合併する肝がんのことで脂肪肝との関連が示唆されています。これまでお酒を原因としない非アルコール性脂肪性肝疾患は肝硬変や肝がんに進展しないと考えられてきましたが、2割程度の方に炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)が存在することが明らかになりました。NASHに進行すると最終的には肝硬変や肝臓がんによって死亡するケースがあります。
日本人は遺伝子的に脂肪肝と肝がんになりやすい
多くの疾患の発症には先天的(遺伝的)な要因と生活習慣などの後天的な要因が大きくか関わっており、脂肪肝も他の疾患と同じく遺伝的要因と後天的要因の影響を受けます。非アルコール性脂肪肝はPNPLA3という遺伝子の型が関係していることが最近の研究でわかってきました。遺伝子(DNA)には4種類の塩基(A(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン))があり、PNPLA3遺伝子はCC型、CG型、GG型の3タイプに分かれます。日本人の場合、GG型を持つ人が白人よりも多いといわれています。この遺伝子型を持つ人はわずかな肥満、もしくは肥満の基準を満たしていない人でも脂肪肝になりやすく、肝硬変や肝がんへ進行しやすいことも明らかになっているため、肥満でない方も脂肪肝やNASHに注意する必要があります。また、遺伝子の型が関係しているため、血縁者に肝硬変や肝がんの人がいる方はより一層メタボ肝がんにならないよう注意する必要があります。
メタボ肝がんを早期発見するには?
メタボ肝がんを予防・早期発見するためには、肝線維化がどの程度進行しているか評価することが大切です。肝線維化を評価する最善の方法は、肝臓に針を刺して肝臓の組織の一部を採取し顕微鏡で診断する肝生検になります。検査自体は15分程度で終わりますが、検査後の安静などのために2~3日入院して行うため、最近では肝線維化の進行を簡単に見つける方法として日本肝臓学会が血液検査の結果から肝線維化進行のリスクを推定することができる「FIB-4 index(フィブフォーインデックス)を推奨しています。
※ FIB-4 indexについては、第3回のコラムで詳しくご紹介します。
まとめ
メタボ肝がんとは「肝炎ウィルスの感染がなく肥満や糖尿病などのメタボ疾患に合併する肝がん」です。日本人は白人よりも遺伝的に脂肪肝や非アルコール性脂肪肝(NASH)になりやすく肝硬変や肝がんに進行しやすいといわれているため、健康診断などで脂肪肝を指摘された場合は、食事と運動習慣を見直すとともに速やかに肝臓専門医にご相談ください。
健診結果を持っている方は、Fib-4 indexで肝臓の状態をチェックしてみよう!
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<コラム筆者> 角田 圭雄 先生 一般社団法人 日本医療戦略研究センター(J-SMARC)代表理事 愛知医科大学病院肝胆膵内科 准教授(特任) |
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